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エル・シガーラ、アビチュエラ・ニエト El Cigala / Habichuela Nieto – Noches del Botánico 12.7.2019

ディエゴ・エル・シガーラ / フアン・アビチュエラ・ニエト

「ノーチェス・デル・ボタニコ」フェスティバル

レアル・ハルディン・ボタニコ・アルフォンソXIII、マドリード 2019712

Diego el Cigala y Juan Habichuela Nieto,festival Noches del Botánico,Real Jardín Botánico Alfonso XIII,Madrid,12 julio 2019.

1989年、グラナダ生まれのアビチュエラ・ニエトことフアン・ファハルドは、ギターで知られるアビチュエラ一族の継承者。力強く、かつ緻密なテクニックをもち、現代らしい一面を見せながらも伝統を忘れない味は、聴きごたえがあります。私の好きな若手ギタリストの一人ですが、この日は不運でした。

スタートは夜9時でまだ明るいし、暑いし、夏のフェスティバルはかなり自由な雰囲気なので、ステージ上の演奏を聴いている人は少数派という辛い状況。フアンは最初のソロの一曲を延々十分以上続け、みんなが席に付くのを待っていたようでしたが、余りに時間がかかるので、途中切れ気味の様子だったのは否めませんでした。

とは言え、次第に調子を取り戻し、二枚のアルバム、「ミ・アルマ・ア・ソラス」(2014)、「センティミエント・デ・ミ・セール」(2017)からの抜粋でサンブラ、ブレリア、タンゴ等をカホン、ベース、パルマのグループ構成で演奏。若さあふれるトーケはおみごとでした。

30分の休憩を挟み、メインアクト”のシガーラが登場して、会場は大盛り上がり。ギターにディエゴ・デル・モラオ、パケーテ、アントニオ・レイ、パーカッションにピラーニャ、他パルマ3人を従え、現代カンテを代表する一人、今年51歳になるスターは、ブレリアに始まりソレア・ポル・ブレリア、ファンダンゴ、アレグリアスと歌い次いで行きます。以前のスピード感に変わって聞かれる枯れた感じの渋さ。中々の味わいで聞かせます。

そしてピアノのハイメ・カラブッチとベースが加わり、ボレロを一曲。まってましたと観客が湧きます。そしてフラメンコに戻ってタンゴ、ブレリアなどを歌唱し、アンコールを加えた二時間弱のステージを終えました。

この夜、彼は、遠目でも分かるぐらい酔っていて、ろれつの回らない時もしばしば。しかしそれをすっかり帳消しにしてしまうように、口から出てくる歌詞を本気で生きている瞬間もあって、だから、憎めない。だから、観に行ってしまう。やっぱりヒターノのフラメンコには敵わないと感じた夜でした。