Text: Keiko Higashi
スペインを訪れるお楽しみの一つは食事。パエリア、アヒージョ、トルティージャ(ポテトのオムレツ) 、生ハムにチョリソにチーズをワインで……、でもそれだけじゃないんですよ!
北のバルセロナやバスク地方なら、魚介をふんだんに使った伝統的な地中海料理に加え、世界の最先端を行く分子ガストロノミーも楽しめるし、
南のアンダルシア地方だって、ガスパチョや魚介の揚げ物だけでなく、アラブやユダヤ文化の影響がいまだに残る料理も多く、興味を引きます。
そしてマドリードはと言うと、ここは首都らしく、地方都市から移り住んだ人々が運んできた様々な郷土料理が渾然一体となって、他の地方にはないバラエティー豊かな食文化を育んでいます。
そんな、マドリードらしい伝統料理を楽しむなら、ぜひ訪ねて欲しいのがカサ・ミンゴ (Casa Mingo)。

王宮からもほど近い地下鉄プリンシペ・ピオ駅から徒歩5分。スペインを代表する画家ゴヤが描いた壁画が素晴らしい、そして彼自身もそこに眠るサン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂(Ermita de San Antonio de la Florida)のお隣に位置し、石と木の伝統的な外観が創業1888年の歴史を物語ります。
マヨール広場などのレストランは観光客でごった返し、お値段も観光客仕様の所がほとんどですが、ここは地元の人で賑わう良心的なお店。自慢の品揃えのシードラ(りんご酒)と共にいただくローストチキンがこのお店の名物で、ほか、マドリードの郷土料理コシード(チョリソ、豆類、野菜の煮込み) も人気です。

店内はカウンターとテーブル席に分かれ、夏は外のテラス席が気持ちいい。それぞれのエリアで値段が変わってくるのはスペインの一般的なルールですが、このお店の私のオススメはカウンター。テーブル席より値段が安いのもありますが (小さいグラスのシードラは一杯1・5ユーロと、いまどき驚きの安価!) 、混雑するテーブル席を待たなくて良いし、何より、その気軽な立ち食い・立ち飲み感がカッコいいんです。

ゴヤの絵を堪能した後で、ぜひ立ち寄ってみてくださいね!
ちなみにシードラ (シードル。英語ではアップル・サイダーと言いますね) は、甘い口当たりでも決してジュースではありませんから、美味しいからって沢山飲むと結構酔いますよ。お気をつけあれ。
