文/東 敬子(スペイン文化ライター)Text: Keiko Higashi
『裸のマハ / 着衣のマハ』、『マドリード、1808年5月3日』などで有名なスペインを代表する画家、フランシスコ・デ・ゴヤ (1746-1828) が眠るサン・アントニオ・デ・ラ・フロリダ礼拝堂(Ermita de San Antonio de la Florida)は、観光客で賑わうマドリードの中心街と、普通の生活が広がる閑静な住宅街の、ちょうど狭間にあります。
だから、誰もが知るゴヤの素晴らしいフレスコ画が無料で見れるのに、観光客でごった返すこともなく、誰も知らないちょっとした穴場を発見したような特別感が、ハートをくすぐります。

王宮から歩いても15分ほどで行けますが、迷ったら嫌だなという方は、まずは地下鉄プリンシペ・ピオ駅に向かいましょう。そこからは、駅の正面出口の前のフロリダ通りを、駅を背にして右方面に5分ほど歩いて行くだけ。
草木に埋もれた小さなベンチが一つ無造作に置いてある、イギリス庭園風のあまり飾り気のないエントランスから入ると、奥にはこの建物の歴史を紹介するビデオが上映されている小部屋があり、その右手には礼拝堂があります。
数多くの作品の中でも『我が子を食らうサトゥルヌス』など、「黒い絵」のイメージが強いゴヤですが、ここに描かれているのは清らかで心安らかな情景。真下から見上げると、3Dのごとく、本当に天使が宙を舞っているかに感じられ、ずっと眺めていたくなります。

また、建物の、道を挟んだ向かい側にはゴヤの像があり、椅子に座り、自分自身が眠るその場所を見守っています。

この辺は、他には特に観光スポットはありませんが、礼拝堂の隣にあるレストラン「カサ・ミンゴ (Casa Mingo) 」は、創業1888年のスペイン料理の老舗。お値段も良心的で、いつも地元っ子で賑わう、一度は入ってみたいお店です。

ゴヤ像の裏手にはマンサナレス川が流れており、最近はとても綺麗に整備され、カサ・デ・カンポという森にも続いているので、土日などはジョギングしたり自転車に乗ったりと、市民の散歩コースになっています。

また、プリンシペ・ピオ駅のショッピングモールではスペインのプチプラブランドが大にぎわい。フードコートもあり、マドリードの日常が楽しめます。

プラド美術館は大きすぎて…とか、アートにそれほど興味はないけどスペイン画家の作品の一つぐらいは見て帰りたい…なんて方は、ちょっと寄ってみるのも良いですよ!